免許の失効と自主返納の違い 運転経歴証明書・再取得・条文
免許を更新せずに失効させるのと、自主返納(申請による取消し)をするのは、法律上は別の仕組みです。返納は道路交通法104条の4の申請で、失効は同法105条により更新を受けなかったときに免許が効力を失うものです。どちらの場合も、その後は運転できません。運転経歴証明書は、返納でも失効でも、5年以内なら申請できます。
大きな違いは、再び免許が必要になったときと、運転経歴証明書が出ない場合の条件にあります。この記事は一般的な情報です。個別の判断は住所地の警察署や運転免許センターなどにお願いします。内容は2026年11月5日に確認しました。
条文で見る返納と失効の違い
返納は、免許を受けた人が住所地の公安委員会に取消しを申請します。公安委員会は申請を受けて免許を取り消します(104条の4第1項・第2項)。失効は、免許証等の更新を受けなかったときに、免許が効力を失うものです(105条)。更新の期間は、有効期間が満了する日の直前の誕生日の1か月前から満了する日までです(101条1項)。

表は左右に動かして読めます。
| 項目 | 自主返納(申請による取消し) | 失効(更新しなかった) |
|---|---|---|
| 根拠 | 道路交通法104条の4 | 道路交通法105条 |
| 手続き | 公安委員会に取消しを申請する | 手続きはない。更新しないまま期間が過ぎる |
| 運転経歴証明書 | 取消しの日から5年以内に申請できる | 失効の日から5年以内に申請できる |
| 再び免許を取るとき | 失効のような試験免除の規定は挙げられていない(97条の2第1項) | 失効後の期間や事情によっては試験の一部が免除される(同項) |
| 手続きの窓口 | 警察署、運転免許試験場など。有効期間内のみ(警視庁・長崎県警の案内) | 期限が切れた後の扱いは、各県警の失効の案内を見る |
返納の窓口や持ち物は免許を自主返納する手続きに書いています。有効期限が切れた免許は、警視庁と長崎県警の案内では返納の手続きの対象になりません。返納するなら、期限が切れる前に済ませる必要があります。
運転経歴証明書が出る条件
運転経歴証明書は、返納でも失効でも申請できます。根拠は道路交通法105条の2第1項です。失効した人の申請ができるようになったのは、令和元年の法改正(同年12月施行)からです(警察庁の高齢運転者対策の資料)。

期限は同じです。施行令39条の2の6は、申請した日の前5年以内に取消しを受けた、または失効した人で、現に免許を受けていない人に交付すると定めています。警察庁のページも、返納後または失効後5年以上たった人は交付を受けられないとしています。
出ない場合の条件は、返納と失効で書き方が違います。
- 返納の場合: 取消しや停止の基準に当たっている人は、そもそも申請による取消しが行われません(施行令39条の2の4)。警察庁のページも、その人は自主返納できないとしています
- 失効の場合: 失効した日の前日に、取消しや停止の基準に当たっていた人などは、運転経歴証明書の交付を受けられません(施行令39条の2の5)
- どちらも: 違反などで免許を取り消された人は交付を受けられません(警察庁)
申請の期限や手数料は運転経歴証明書の申請で説明しています。失効後の申請について、警視庁は、運転免許試験場と島部の警察署で受け付けています。失効した免許証をお持ちなら持参するよう案内しています(お持ちの場合のみ)。
失効した免許で運転するとどうなるか
失効すると免許はなくなります。道路交通法64条1項は、免許を受けないで自動車や原動機付自転車を運転することを禁じています。違反した場合の罰則は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(117条の2の2第1項1号)。

警視庁の失効に関する案内も、有効期間が切れた状態では運転できないと書いています。更新しないまま期間が過ぎた免許証は、手元にあっても有効ではありません。
家族が車を貸す立場の場合も注意が要ります。同条2項は、無免許運転になるおそれのある人に自動車を提供することを禁じています。
失効後に免許を取り直すときの扱い
失効した後に再び運転したくなる場合の定めは、道路交通法97条の2第1項にあります。失効から日が浅い人には、運転免許試験の一部を免除する規定があります。

- 失効から6か月以内(3号): 適性試験を除く運転免許試験が免除されます
- 失効から6か月を超えて1年以内(4号): 仮免許に係る学科と技能の試験が免除されます
- 海外旅行や災害などのやむを得ない理由があった場合: 3号の括弧書きにより、失効から3年を経過しない範囲で、事情がやんだ日から1か月以内に受けられます
警視庁の失効の案内は、手続きの区分を「やむを得ない理由がなく失効後6か月以内」「同6か月超1年以内」「やむを得ない理由があり6か月以内」「同6か月超3年以内」などに分けています。やむを得ない理由の例は、海外旅行、入院、在監です。「仕事が忙しかった」「お知らせのはがきを見ていない」「予約がとれなかった」は該当しないと書かれています。
75歳以上の人は、失効後の再取得でも検査が付きます。97条の2第1項3号のイからハは、認知機能検査等や運転技能検査等、高齢者講習などを受けることを免除の条件にしています。更新の場合の検査は認知機能検査と高齢者講習で説明しています。
見落としやすい点があります。施行令34条の3第2項9号は、失効した人で運転経歴証明書の交付(または運転経歴情報の記録)を受けた人を、3号の対象から除いています。4号も「前号の政令で定める者を除く」と書いています。運転経歴証明書を受け取ったあとは、この免除を前提にできない可能性があります。再び運転する可能性があるなら、申請前に窓口へ確かめてください。
申請による取消し(返納)を受けた人は、97条の2第1項の3号と4号に挙げられていません。返納後の再取得は、免除を前提にしないで考えるのが無難です。実際の試験の扱いは、免許試験場で確認してください。
どちらにするかを決める前に確かめること
返納と失効のどちらを選ぶかは、本人と家族の事情で決まります。確かめる点を並べます。

- 運転経歴証明書が必要か。必要なら、どちらでも5年以内に申請します
- 将来、免許を取り直す可能性があるか。失効なら条件次第で試験が一部免除されます。ただし運転経歴証明書を受けた場合の扱いを確かめます
- 手続きの期限。返納は有効期間内に限られ、失効後の運転は無免許運転です
- 本人が窓口へ行けるか。行けない場合の代理申請は家族による代理申請で扱っています。失効後の経歴証明書の代理申請は、警視庁の案内では委任状で認められています。愛知県警では、失効した場合の代理申請はできません
- 返納した人への支援。警察庁のページによると、自主返納した人を対象に自治体や事業者が支援を行っています。内容は同ページが案内する全日本指定自動車教習所協会の「高齢運転者支援サイト」で確かめます
これらは窓口ごとの運用が絡みます。住所地の警察署か運転免許センターに、事情を伝えて相談するのが確実です。
出典
- 道路交通法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105
- 道路交通法施行令(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/335CO0000000270
- 道路交通法施行規則(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000002060
- 警察庁「運転免許証の自主返納について」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/jishuhennou.html
- 警察庁「高齢運転者対策の概要」(PDF) https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/r08_koureiuntengaiyou.pdf
- 警視庁「有効期限が過ぎた方へ(失効手続等)」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshin/shikko/index.html
- 警視庁「5年以内に失効し、運転経歴証明書等の交付申請をする方」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshin/jisyu_hennou/shikko_kohu.html
- 警視庁「運転免許証等の自主返納の申請をする方」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshin/jisyu_hennou/henno_only.html
- 長崎県警察「運転免許証の自主返納及び運転経歴証明書について」 https://www.police.pref.nagasaki.jp/police/menkyo/sonota-tetsuzuki/hennou-keirekisyoumei/
- 愛知県警察「運転経歴証明書」 https://www.pref.aichi.jp/police/menkyo/kerekisyoumei/unntennkeireki.html
いずれも2026年11月5日に確認しました。法令はe-Govの現行条文で、改正されることがあります。